第3回奥能登フラム塾のテーマは「能登杜氏」。講師に能登杜氏組合常任顧問の中倉さん、
宗玄酒造株式会社常務取締役の川崎さんを迎え、奥能登珠洲の日本酒について語りました。
「能登杜氏」は、越後、但馬、南部と並び、四大杜氏と呼ばれます。現在75人ほどの杜氏を擁している能登杜氏の中でも、三盃さん、波瀬さん、中さん、農口さんは「能登杜氏四天王」として有名です。日本酒造杜氏組合連合会会長としても活躍されている中倉恒政さんも当時から彼らの実力が飛びぬけていたことを認めており、敬意をもって四天王と呼び続けているようです。
「能登杜氏四天王」を定着させた漫画として「夏子の酒」(1989-90年連載)を紹介していただきました。日本の農業や酒造の問題にも切り込んだ社会派の一冊です。
また、杜氏のことを「おとしべ」と呼ぶ風習があり、杜氏に御をつけた「おとうじ」に、部屋にこもる職人という意味で「べ」がくっついたからと考えられていることから、杜氏という職業が如何に特別なものであったかを感じさせます。
冬になると本格的なシーズンを迎える酒造りは、夏になると海に出たり、炭焼きや葉タバコの栽培などをし、11月から春まで酒蔵で働くというサイクルで生活していたようで、かつては、奥能登珠洲からも出稼ぎをしていました。
一つの酒蔵でも、純米吟醸や純米大吟醸、大吟醸、吟醸、山廃、生原酒などいろいろな種類があります。これらの種類は、使用原料や精米歩合などで厳密に定められており、わかりやすい規定では、精米歩合が50%以下だと大吟醸、60%以下だと吟醸酒と変化することや、アルコール添加された醸造酒とアルコール添加されていない純米酒などが挙げられます。
しかしながら、精米歩合が低くアルコール添加のない純米酒が一番美味しいかというと、必ずしもそうではないのが日本酒を楽しむ醍醐味とのこと。日本酒には、辛いものや甘いもの、さわやかなもの、まろやかなものなど多様な味があります。熱燗で飲んだり、冷酒で飲んだりしながら、自分の好きな日本酒を見つけ出すことこそが日本酒の楽しみ方であり、美味しい日本酒を楽しむ秘訣のようです。
美味しい日本酒を造るのは、酒米作りから。宗玄酒造では、酒米「石川門」の田植えや稲刈りを、参加者と共に行う「奥能登酒キャンプ」を毎年行っています。
宗玄酒造は、2018年創業250年をむかえた奥能登最古の酒蔵。
櫻田酒造は家族で経営しており、約9割のお酒が地元の方に飲まれています。
お祝い事にかかせない日本酒の存在。
祭りでお客さんに振舞うのはもちろんのこと、祭りに参加している地元の人たちも、飲みながらキリコを巡行します。
日本社会の酒文化には、食事を美味しく食べるための潤滑油としてのお酒ではなく、酔っ払うために飲むという傾向があります。珠洲の日本酒の美味しさを伝えるためには、酒自体の美味しさはもちろんのこと、珠洲に来て飲むお酒は美味しいという雰囲気や文化をつくることが重要、という北川塾長の指摘は珠洲の食体験をどう伝えるかのヒントになりました。
櫻田酒造「特別純米酒 大慶」の酒粕を練り込んだ『能登酒粕石鹸 能登美人石鹸』。
酒粕に大量に含まれる「リノール酸」がお肌にいいらしいです。
2005年に廃線となったのと鉄道能登線。
宗玄酒造では、廃線後のトンネルを貯蔵庫として活用しています。一定の温度と湿度で貯蔵された酒は、さらに深みが出るのだそう。
奥のとトロッコ鉄道(愛称:のトロ)とは、のと鉄道能登線跡を利用し、恋路駅から宗玄トンネルまで約300mを、自分の足でこいで進む小さな鉄道です。