講師におさかなマイスターの前野さんと釣り名人の林さんを迎え、奥能登珠洲で食べる魚の美味しさの秘密に迫ります。
珠洲市の蛸島漁港は石川県に69ある漁港の中で、2箇所しかない「三種漁港」(全国的な規模の漁港)に指定されています。この蛸島漁港では、カラフト(珠洲では「アオマス」と呼ぶ。以下、括弧内は珠洲での呼び方)やハタゴイ(モンゴツ)、キジハタ(ナメラ)、アマダイ、タラ、サクラマス、甘エビ、フグなど南遠・北遠からも多種多様な魚が揚がり、流通される品種だけで280種を数えます。
様々な海藻が販売されていることも特徴的で、ツルガラメ、カジメ、クロメ、アオサ、海苔、もずく、海ゾウメン、ツルゴ、アカモクなど普段、聞きなれない名前の海藻も多く流通しています。
美味しい魚の宝庫である珠洲の海は漁師のみならず、釣り人にとってもパラダイスです。県内外から珠洲へ釣り人が訪れ、特にスズキは日本有数のポイントになっており、全国大会スズキの部では、珠洲でスズキを釣った人が3年連続で優勝したこともあります。
このように種類豊富な珠洲の魚の特筆すべき点はその美味しさです。これには珠洲の地理的条件が密接に関わっていると考えられます。一般的に魚のえさとなるプランクトンは、暖流と寒流の狭間で大量に発生します。能登半島の突先に位置し日本海に突き出る珠洲の沖では、暖流の対馬海流と寒流のリマン海流がぶつかり、豊富なプランクトンが発生します。この豊富なプランクトンをえさにして、珠洲の魚は脂が乗って美味しくなります。
ところで、サバやイワシを糠に漬けてつくる「こんか漬」や「イシル」、「ヨシル」などの「魚醤」は有名ですが、珠洲の海産物を加工した商品は意外にも多くありません。珠洲では魚料理でも凝った調理をするよりも、素材の味をそのまま活かすことが多いためです。加えて、波の荒い外浦(日本海側)と穏やかな内浦(富山湾側)という二つの性質を持つ海を有するために、年間を通じて海産物に恵まれていることも影響していると考えられます。
講師の前野さんは、漁協組合で定年退職まで働かれていて、漁師さんが採ってきた魚を魚屋さんに売るお仕事をされてきた。
石川県では、メバルの仲間を八目(ハチメ)と呼び、大きいものは刺身にし、小さいものは煮物や焼物にすることが多いよう。
県内では、69ヶ所の漁港があり、この蛸島漁港は全国規模の大きさを持ち、たくさんの人が行き交い、賑わっている。
素材の味を活かすためには、2つの重要なポイントがあります。一つは「旬」。外浦と内浦では同じ種類でも味が全く違うため、美味しい時期もそれぞれ違います。もう一つは「鮮度」。釣ってから食べるまでの時間が短ければ短いほど美味しい魚もあれば、熟成させることで美味しくなる魚もあり、その魚にあった食べ方があります。
このような豊穣な漁場で育った美味しい魚を楽しむため、魚釣りから食べるまでを旅行の一つの体験として楽しむことも一つです。釣り道具を用意して早朝から釣りに出かければ、芸術祭をきっかけに珠洲の新しい楽しみに出会えるかもしれません。
蛸島の主な漁法は、「巻網」で大きな水揚げ。(船の機械で網を巻いて採る方法)次に、定置網魚・底引き網・刺し網と続く。
昔、蛸島から車で15分程度の中心地にも、飯田港という漁港があった。現在は、秋のシーズンになるとイカ釣り漁船で一杯となる。
旬な魚が釣れると、近所の人にわけ、漁師さんからいただくこともあるそう。芸術祭シーズンの秋にはカマスが入れ食いになる。