若山エリアでももっとも山手に位置する上黒丸地域を拠点に継続的に活動する、美術家、人類学者、映像作家らのチーム。地域に埋もれている「人・モノ・コト」を美術的な視点で掘り起こし、近代化によって薄れてしまった里山、里海の不可欠な関係を山から再考することを試みてきた。さまざまなアートプロジェクトを媒介に深めてきた地域住民との対話、10 年間におよぶ活動の成果を、旧上黒丸小中学校の空間に集結させる。
住民から集めた板材などを加工してつくられたさまざまな箱の集合体、住民の記憶が宿った品物、人が入らなくなった山々から移植した植物……。奥能登の里山で暮らす人々の息づかいや森の変容など、現在も進行する時間のなかに秘められたエネルギーが集結し、旧上黒丸小中学校の体育館は記憶の容器となる。
作家は２００４年にスター★ドームを開発し、各地でワークショップ「きみだけのそら」を開催してきた。今回の作品では、紙と竹によって構成された天蓋を曼荼羅に配置し、風の音を聴き、土の匂いを確かめながら奥能登の風土を体感する。天には空。地には命。生と死がめぐりめぐる、天と地と人のいとなみを「ただ座る」ことから現出させる。
上黒丸に暮らす住民の日常の中にある、きらきらした「物語」を拾い集めて「小さな」映画をつくる。映画は住民へのインタビューと、それをもとにしたフィクションから構成される。奥能登の山間部、長く厳しい冬も含めた一日、一年、一生のなかで育まれる地域の心を、地域の日常や特性を際立たせることで描き出す。
仏教哲学者・鈴木大拙（１８７０‒１９６６）が飯田小学校高等科で教員を務めていた史実をもとに、「大拙が描き残した円相のうち最大のものは上黒丸で描かれた。しかしそれを示す記録や手がかりはない」という伝説を創作。その円相を探しだすために、上黒丸地域全域でアクションを展開するランドアート作品。
上黒丸の集落は、深い森に包まれている。海とつながる大きな水の循環の中にあり、それ自体も世代交代を繰り返し生を更新しつづけている上黒丸の森を、人々が集う旧小中学校に土の彫刻で現出させる。珠洲に伝わる土の文化に思いをはせ、土と人の営みと歴史の気配を風景のなかに立ち現す試み。
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中瀬康志『月を映す花舞台』2014年
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坂巻正美『上黒丸 北山 鯨組』2017年
